M128 (#9 / #4-01-1) を使用して工具傾斜を自動的に補正する

用途

制御された回転軸の位置が NC プログラムで変更されると、コントローラが傾斜プロセス中に M128 で、リニア軸の調整動作によって工具傾斜を自動的に補正します。それにより、ワークに対する工具先端の位置は変わらず維持されます (TCPM)。

 
Tip

ハイデンハインは M128 の代わりに機能的に優れた FUNCTION TCPM 機能の使用を推奨します。

条件

  • 回転軸が装備された機械
  • キネマティクス記述
  •  
    Machine

    機械のマニュアルを参照してください。

    機械メーカーが機械のキネマティクス記述を作成します。

  • ソフトウェアオプション Adv. Function Set 2 (#9 / #4-01-1)

機能説明

作用

M128 はブロックの先頭で作用します。

以下の機能で M128 をリセットします:

  • M129
  • FUNCTION RESET TCPM
  • 操作モード「プログラム実行」で別の NC プログラムを選択します
 
Tip

M128 は操作モード「手動」でも作用し、操作モードを切り替えても有効なままです。

適用例

M128 を使用しない動作:

M128 を使用する動作

ユーザーマニュアルに含まれている NC プログラムは、あくまで解決のヒントです。機械で NC プログラムまたは個々の NC ブロックを使用する前には、必ずそれらを調整してください。

以下に応じて調整を行います。

  • 工具
  • 切断値
  • 送り速度
  • 安全な高さまたは安全な位置
  • 機械特有の位置 (例:M91)
  • プログラム呼出しのパス

一部の NC プログラムは機械キネマティクスに依存しています。このような NC プログラムは、最初のテストランの前にその機械キネマティクスに合わせてプログラムを調整してください。

さらに、実際のプログラムランの前にシミュレーションで NC プログラムをテストしてください。

 
Tip

プログラムをテストすることで、ソフトウェアオプションや有効な機械キネマティクス、現在の機械構成で、その NC プログラムが使用可能かどうかを確認できます。

11 L X+100 B-30 F800 M128 F1000

:回転軸動作の自動補正により移動する

コントローラはこの NC ブロックで、調整動作用の送り速度で M128 を有効にします。次に、 コントローラは X 軸と B 軸で同時の移動動作を実行します。

回転軸の傾斜中にワークに対する工具先端の位置を一定に保つために、コントローラはリニア軸を使用して連続的な調整動作を実行します。この例では、X 軸と Z 軸で調整動作が実行されます。

M128 を使用しない場合、工具の傾斜角度が変化するとすぐに、目標位置に対する工具先端のオフセットが生じます。このオフセットは、コントローラによって補正されません。NC プログラムでこの偏差を考慮しないと、オフセットがある状態で加工が行われたり、衝突が発生したりします。

入力

M128 を定義すると、ダイアログが続行され、送り速度 F が照会されます。定義された値は、調整動作中のリニア軸の送り速度を制限します。

制御されていない回転軸での傾斜加工

制御されていない回転軸、いわゆるカウンタ軸を M128 と組み合わせて使用することにより、傾斜加工を実行することもできます。

制御されていない回転軸での傾斜加工は、以下のように行ってください:

  1. M128 を有効にする前に回転軸を手動で位置決めします
  2. M128 を有効にします
  3. コントローラは存在するすべての回転軸の実際値を読み取り、そこから工具ガイド点の新しい位置を計算し、位置表示を更新します。
  4. 工具の基準点

  5. コントローラは次の移動動作と一緒に必要な調整動作を実行します。
  6. 加工を実行します
  7. プログラムの末尾で M128M129 でリセットします
  8. 回転軸を初期位置に戻します
 
Tip

M128 が有効な間は、制御されていない回転軸の実際位置が監視されます。実際位置が、機械メーカーが定義した値だけ目標位置からずれている場合は、エラーメッセージが出力されて、プログラムランが中断されます。

注意事項

 
注意事項
衝突の危険に注意!
ヒルトジョイント付きの回転軸は、位置決めの際にジョイントから取り出す必要があります。取り出す際、そして位置決めの際に衝突のおそれがあります。
  1. 回転軸の位置を変える前に工具を退避させます
 
注意事項
衝突の危険に注意!
周辺フライス加工において工具傾斜を直線 LN によって工具の向き TXTY および TZ で定義する場合、コントローラは回転軸の必要な位置を自動計算します。現在の位置を起点にして、回転軸動作が最小の旋回ソリューションが選択されます。それによって、不意の移動動作が生じる可能性があります。
  1. NC プログラムを処理前にシミュレーションによってテストします
  2. NC プログラムをゆっくりと実行します

周辺フライス加工における 3D 工具補正 (#9 / #4-01-1)

ベクトルでの出力

  • 調整動作用の送り速度は、新しい送り速度をプログラミングするか、M128 を解除するまで有効です。
  • M128 が有効になっている場合、作業エリア「位置」に TCPM アイコンが表示されます。
  • 作業エリア 位置

  • FUNCTION TCPM で常に最初の選択肢を選択すると、M128 と同じ機能が実現されます。この場合、構文 FUNCTION TCPM F TCP AXIS POS PATHCTRL AXIS REFPNT TIP-TIP をプログラミングします。
  • M128 および選択「AXIS POS」を含む FUNCTION TCPM では、有効な基本回転または 3D 基本回転は考慮されません。選択「AXIS SPAT」を含む FUNCTION TCPM または直線 LN および工具ベクトルを使用した CAM 出力をプログラミングしてください。
  • 空間角と軸角度の違い

  • 工具配置を FUNCTION TCPM で補正 (#9 / #4-01-1)

  • M128 が有効な場合、直線 LN で、現在の位置を起点にして、回転軸動作が最小の旋回ソリューションが選択されます。
  • 回転軸の軸位置を直接入力することで、工具の傾斜角度を定義します。それにより、値は機械座標系 M-CS を基準にします。ヘッド回転軸を装備した機械では、工具座標系 T-CS が変わります。テーブル回転軸を装備した機械では、ワーク座標系 W-CS が変わります。
  • 基準系

  • M128 が有効なときに以下の機能が処理される場合、プログラムランが中断され、エラーメッセージが表示されます:
    • 旋削加工モード (#50 / #4-03-1) の切削半径補正 RR/RL
    • M91
    • M92
    • M144
    • 工具呼出し TOOL CALL
    • 動的衝突監視 DCM (#40 / #5-03-1) および同時 M118

機械パラメータと関連した注意事項

  • 機械メーカーはオプションの機械パラメータ maxCompFeed (No. 201303) で、調整動作の最大速度を定義します。
  • 機械メーカーはオプションの機械パラメータ maxAngleTolerance (No. 205303) で、最大角度公差を定義します。
  • 機械メーカーはオプションの機械パラメータ maxLinearTolerance (No. 205305) で、最大リニア軸公差を定義します。
  • 機械メーカーはオプションの機械パラメータ manualOversize (No. 205304) で、すべての衝突物に対する手動の許容値を定義します。
  • 機械メーカーはオプションの機械パラメータ presetToAlignAxis (No. 300203) で、オフセット値をどのように解釈するかを軸別に定義します。FUNCTION TCPMM128 では、機械パラメータは工具軸を中心に回転するテーブル回転軸にのみ関連します (通常は C_OFFS)。
  • 基本変換およびオフセット

    • 機械パラメータが定義されていないか、値 TRUE で定義されている場合、オフセットを使用して平面でのワークの傾き具合を補正できます。オフセットは、ワーク座標系 W-CS の向きに影響します。
    • ワーク座標系 W-CS

    • 機械パラメータが値 FALSE で定義されている場合、オフセットを使用して平面でのワークの傾き具合を補正することはできません。処理中にオフセットは考慮されません。

工具に関連する注意事項

輪郭加工中に工具を傾ける場合は、ボールカッターを使用する必要があります。そうでないと、工具が輪郭を傷つける可能性があります。

加工中にボールカッターで輪郭を傷つけないために、以下にご注意ください:

  • M128 では、工具旋回点を工具ガイド点が同等に扱われます。工具旋回点が工具先端にある場合、工具傾斜時に工具が輪郭を傷つけます。そのため、工具ガイド点は工具中心点になければなりません。
  • 工具の基準点

  • 工具がシミュレーションで正しく表示されるようにするには、工具の実際の長さを工具マネージャの L 列で定義する必要があります。
  • NC プログラムでの工具呼出し時に、ボール半径を負のデルタ値として DL で定義し、それによって工具ガイド点を工具中心点にシフトします。

  • 工具長さの補正

  • 動的衝突監視 DCM (#40 / #5-03-1) に対しても、工具の実際の長さを工具マネージャで定義する必要があります。

  • 動的衝突監視 DCM (#40 / #5-03-1)

  • 工具ガイド点が工具中心点にある場合、工具軸の座標を NC プログラムでボール半径分調整する必要があります。

FUNCTION TCPM 機能では、工具ガイド点と工具旋回点を別々に選択できます。

工具配置を FUNCTION TCPM で補正 (#9 / #4-01-1)

説明

略語

説明

TCPM (tool center point management)

工具ガイド点の位置を維持する

工具の基準点