クランプを衝突監視に統合する (#140 / #5-03-2)

用途

固定具のセットアップ」機能を使用して、作業エリア「シミュレーション」で 3D モデルの位置を機械室内の実際のクランプに合うように算出します。クランプをセットアップしたら、コントローラはそれを動的衝突監視 DCM で考慮します。

条件

  • ソフトウェアオプション Collision Monitoring v2 (#140 / #5-03-2)
  • ワークタッチプローブ
  • 実際のクランプに対応した許可されているクランプファイル
  • クランプファイルでの選択肢

機能説明

固定具のセットアップ」機能は、操作モード「手動」の「設定」アプリケーションでタッチプローブ機能として使用できます。

固定具のセットアップ」機能で、さまざまなプロービングを使用してクランプの位置を決めます。まず、各リニア軸でクランプの 1 つの点をプロービングします。それによって、クランプの位置を指定します。すべてのリニア軸で 1 つの点をプロービングした後、位置決めの精度を高めるために、さらなる点を記録することができます。ある軸方向で位置を決めたら、それぞれの軸のステータスが赤から緑に変わります。

誤差推定グラフは各プロービング点について、3D モデルが実際のクランプからどれだけ離れていると推定されるかを示します。

誤差推定グラフ

固定具のセットアップ」機能の範囲は、以下のようにソフトウェアオプション Adv. Function Set 1 (#8 / #1-01-1) および Adv. Function Set 2 (#9 / #4-01-1) によって異なります:

  • 両方のソフトウェアオプションが有効になっている:
  • 複雑なクランプもプロービングするため、工具を較正前に回転させ、較正中にオンにすることができます。

  • Adv. Function Set 1 (#8 / #1-01-1) のみが有効になっている:
  • 較正前に傾けることができます。加工面は一定でなければなりません。プロービング点間で回転軸を移動させると、エラーメッセージが表示されます。

  •  
    Tip

    回転軸の現在の座標と定義された旋回角度 (「3Dローテーション」ウィンドウ) が一致する場合、加工面は一定です。

  • どちらのソフトウェアオプションも有効になっていない:
  • 較正前に傾けることができません。プロービング点間で回転軸を移動させると、エラーメッセージが表示されます。

加工面の傾斜 (#8 / #1-01-1)

工具配置を FUNCTION TCPM で補正 (#9 / #4-01-1)

作業エリア「シミュレーション」の拡張機能

作業エリア「プローブ機能」に加えて、作業エリア「シミュレーション」はクランプのセットアップ時のグラフィックサポートを提供します。

作業エリア「シミュレーション」が開いた「固定具のセットアップ」機能

固定具のセットアップ」機能が有効な場合、作業エリア「シミュレーション」は以下の内容を表示します。

  • コントローラから見たクランプの現在位置
  • クランプのプロービングされた点
  • 矢印による可能なプロービング方向:
    • 矢印なし
    • プロービングはできません。ワークタッチプローブがクランプから離れすぎているか、ワークタッチプローブがコントローラから見てクランプ内にあります。

    • この場合、必要に応じてシミュレーションで 3D モデルの位置を補正できます。

    • 赤色の矢印
    • 矢印方向のプロービングはできません。

    •  
      Tip

      クランプのエッジ、コーナー、または大きく湾曲したエリアのプロービングは、正確な測定結果を出しません。そのため、コントローラはこのエリアでのプロービングをロックします。

    • 黄色の矢印
    • 矢印方向のプロービングは条件付きで可能です。プロービングが選択解除された方向で行われるか、衝突を引き起こす可能性があります。

    • 緑色の矢印
    • 矢印方向のプロービングは可能です。

アイコンとボタン

固定具のセットアップ」機能には以下のアイコンとボタンがあります。

アイコンまたはボタン

意味

XY クランプ面

この選択メニューで、どの平面でクランプが機械上にあるかを定義します。

次の平面が使用できます:

  • XY 固定平面
  • XZ 固定平面
  • YZ 固定平面
 
Tip

選択した固定平面に応じて、対応する軸方向が表示されます。例えば、XY クランプ面で軸方向 XYZ および C が表示されます。

クランプファイルの名前

クランプファイルが自動的に元のフォルダに保存されます。

保存前にクランプファイルの名前を編集できます。

仮想クランプの位置を負の軸方向に 10 mm、0.3937 inch または 10° 移動します

 
Tip

クランプをリニア軸 (mm または inch) と回転軸 (°) で移動させます。

仮想クランプの位置を負の軸方向に 1 mm、0.0394 inch または 1° 移動します

  • 仮想クランプの位置を直接入力します
  • プロービング後の値と推定精度

仮想クランプの位置を正の軸方向に 1 mm、0.0394 inch または 1° 移動します

仮想クランプの位置を正の軸方向に 10 mm、0.3937 inch または 10° 移動します

軸のステータス:

  • グレー表示
  • 軸方向はこのセットアッププロセスで選択解除されており、考慮されません。

  • 空き
  • プロービング点がまだ算出されていません。

  • この軸方向でのクランプの位置を決定できません。

  • この軸方向ですでに、クランプの位置に情報が含まれています。この情報は、この時点ではまだ重要な意味を持っていません。

  • この軸方向でのクランプの位置を決定できます。

保存して 有効にする

この機能はすべての算出されたデータを CFG ファイルに保存し、測定したクランプを動的衝突監視 DCM で有効にします。

 
Tip

データソースとして測定プロセスに CFG ファイルを使用する場合、既存の CFG ファイルを測定プロセスの最後に「保存して 有効にする」で上書きできます。

新しい CFG ファイルを作成する場合は、ボタン横に別のファイル名を入力します。

ゼロ点クランプシステムを使用し、そのために例えば Z 軸方向をクランプのセットアップ時に考慮したくない場合、対応する軸方向をスイッチで選択解除できます。コントローラは、選択解除された軸方向をセットアッププロセス時に考慮せず、残りの軸方向だけを考慮してクランプを配置します。

誤差推定グラフ

各プロービング点によって、クランプの可能な配置をさらに制限し、3D モデルを機械内の実際の位置により近づけます。

誤差推定グラフは、各プローブポイントについて、3D モデルが実際のクランプから離れている値を示します。

透明なバーのある「固定具のセットアップ」機能の誤差推定グラフ

固定具のセットアップ」機能の誤差推定グラフは次の情報を表示します。

  • 誤差推定[mm]
  • この値は、各プローブポイント後の 3D モデルとクランプ間の最大推定間隔を示します。

  • 平均二乗偏差(RMS)
  • この値は、各プローブポイント後の 3D モデルとクランプ間の記録されたすべての間隔の平均値を示します。

  • 偏差 [mm]
  • この軸を使用すると、3D モデルからクランプのプローブポイントまでの推定間隔を確認できます。

  • プローブポイントの番号
  • この軸は、これまでのプローブポイントの数を示します。

  • バー
  • すべての軸のステータスがまだ緑色になっていない場合、透明なバーが表示されます。

  • 各プローブポイント後に、3D モデルが再調整されます。これにより、以前の値も変更されます。

  • 誤差推定グラフのバーが透明でなくなり、誤差推定[mm] が希望の精度を示したら、セットアッププロセスは完了です。

以下の要因は、クランプを測定できる精度に影響を与えます:

  • ワークタッチプローブの精度
  • ワークタッチプローブの繰り返し精度
  • 3D モデルの精度
  • 実際のクランプの状態 (例えば摩耗やフライス加工部がある)

クランプに対するプロービング点の順序の例

さまざまなクランプに対して、例えば以下のプロービング点を設定できます:

クランプ

可能な順序

万力ジョーが固定された万力におけるプロービング点

万力の測定時に、以下のプロービング点を設定できます:

  1. 固定した万力ジョーを Z– でプロービングする
  2. 固定した万力ジョーを X+ でプロービングする
  3. 固定した万力ジョーを Y+ でプロービングする
  4. 2 番目の値を Y+ で回転に対してプロービングする
  5. 精度を高めるためにチェック点を X– でプロービングする
三爪チャックにおけるプロービング点

三爪チャックの測定時に、以下のプロービング点を設定できます:

  1. 爪チャックのボディを Z– でプロービングする
  2. 爪チャックのボディを X+ でプロービングする
  3. 爪チャックのボディを Y+ でプロービングする
  4. 爪を Y+ で回転に対してプロービングする
  5. 爪の 2 番目の値を Y+ で回転に対してプロービングする

爪が固定された万力を測定する

 
Tip

希望の 3D モデルがコントローラの要件を満たす必要があります。

クランプファイルでの選択肢

次のように「固定具のセットアップ」機能で万力を測定します。

  1. 実際の万力を機械室内で固定します

  1. 操作モード「手動」を選択します

  1. ワークタッチプローブを取り付けます
  2. 固定した万力ジョーの上方で際立った点に手動でワークタッチプローブを位置決めします
  3.  
    Tip

    このステップは後に続くプロセスを容易にします。

  1. 設定」アプリケーションを選択します

  1. 固定具のセットアップ」を選択します
  2. 固定具のセットアップ」メニューが開きます。

  1. 実際の万力に合う 3D モデルを選択します

  1. 開く」を選択します
  2. 選択された 3D モデルがシミュレーションで開きます。

  1. ボタンを使用して、3D モデルを個別の軸に対して仮想機械室内でプリポジショニングします
  2.  
    Tip

    万力のプリポジショニングではワークタッチプローブを基準点として使用してください。

    この時点では、コントローラはクランプの正確な位置を認識していませんが、ワークタッチプローブの位置は認識しています。3D モデルをワークタッチプローブの位置に基づき、例えばテーブル溝にプリポジショニングする場合、実際の万力の位置に近い値が得られます。

    最初の測定点を記録した後に、引き続き移動用の機能で操作を行い、クランプの位置を手動で修正することもできます。

  1. クランプ平面を指定します (例えば XY)
  2. ワークタッチプローブを緑色の下向き矢印が現れるまで移動させます
  3.  
    Tip

    この時点では、3D モデルはプリポジショニングされただけであるため、緑色の矢印は、プロービング時にクランプの希望のエリアもプロービングするかどうかに関する確実な情報を提供できません。シミュレーションと機械におけるクランプの位置が一致しているかどうか、また、機械上での矢印方向のプロービングが可能であるかどうかを確認してください。

    エッジ、面取り、丸み付けのすぐ近くでプロービングしないでください。

  1. NC スタートキーを押します
  2. コントローラは矢印方向でプロービングします。
  3. コントローラは Z 軸のステータスを緑色にし、クランプをプロービングした位置に移動させます。コントローラはプロービングした位置をシミュレーションで点によってマークします。

  1. プロセスを X+ および Y+ 軸方向で繰り返します
  2. 軸のステータスが緑色になります。

  1. その他の点を Y+ 軸方向で基本回転に対してプロービングします
  2.  
    Tip

    基本回転のプロービングにおいて最大限の精度を得るために、プロービング点をできる限り互いから離して設定します。

  3. コントローラは C 軸のステータスを緑色にします。

  1. チェック点を X- 軸方向でプロービングします
  2.  
    Tip

    測定プロセスの最後の追加チェック点は一致の精度を高め、3D モデルと実際のクランプの間のエラーを最小限に抑えます。

  1. 保存して 有効にする」を選択します
  2. コントローラは「固定具のセットアップ」機能を終了し、測定された値を含む CFG ファイルを表示されているパスに保存し、測定されたクランプを動的衝突監視 DCM に統合します。

注意事項

 
注意事項
衝突の危険に注意!
機械での固定状況を正確にプロービングするためには、ワークタッチプローブを正しく較正し、値 R2 を工具マネージャで正しく定義する必要があります。そうしないと、ワークタッチプローブの間違った工具データによって不正確な測定結果や、場合によっては衝突が生じるおそれがあります。
  1. ワークタッチプローブを定期的に較正します
  2. 工具マネージャでパラメータ R2 を入力します
  • コントローラは 3D モデルと実際のクランプの間のモデリングにおける違いを認識できません。
  • セットアップの時点では、動的衝突監視 DCM はクランプの正確な位置を認識していません。この状態では、クランプ、工具または機械室内の他の装置部品との衝突が起こる可能性があります (例えばクランプ爪)。装置部品はコントローラの CFG ファイルを使用してモデリングすることができます。
  • CFG ファイルを KinematicsDesign で編集する

  • 固定具のセットアップ」機能をキャンセルすると、DCM はクランプを監視しません。この場合、事前にセットアップされたクランプも同様に監視から除外されています。警告が表示されます。
  • 一度に測定できるクランプは 1 つのみです。複数のクランプを同時に DCM で監視するためには、クランプを CFG ファイルに統合する必要があります。
  • CFG ファイルを KinematicsDesign で編集する

  • 爪チャックを測定する場合は、万力の測定時と同様に、ZX および Y 軸の座標を決めます。個別の爪に基づき回転を算出します。
  • +-*/() キーを使って、数の入力フィールド内で計算できます。
  • 保存されたクランプファイルを FIXTURE SELECT 機能で NC プログラムに統合することができます。それにより、実際の固定状況を考慮して NC プログラムをシミュレーションおよび処理することができます。
  • NC 機能「 FIXTURE」でクランプをロードおよび削除する