OCM 切削データ計算機 (#167 / #1-02-1)

OCM 切削データ計算機の基本事項

概要

OCM切削データ計算機は、サイクル 272 OCM ROUGHING切削データの計算に使用します。これは材料と工具の特徴から求められます。算出された切削データによって、時間あたりのチップ量を増やし、生産性を上げることができます。

その他に、OCM切削データ計算機を使って、機械的負荷と熱負荷のスライダーから工具負荷を変更することができます。それによってプロセスの確実性、摩耗、生産性を最適化することができます。

条件

 
Machine

機械のマニュアルを参照してください。

計算された切削データを最大限に利用するには、十分に高性能なスピンドルと安定性のある機械が必要です。

    • この既定値は、ワークピースが固定具で確実に固定されていることを前提とします。
    • この既定値は、ワークピースがホルダーに確実に固定されていることを前提とします。
    • 使用するワークピースが加工する材料に適している必要があります。
 
Tip

切削がとても深く、ねじれの角度が大きい場合、ワークピース軸の方向に引張る力が強く働きます。十分な許容深さがあることに注意してください。

切削条件の遵守

サイクル 272 OCM ROUGHING の切削データのみを使用してください。

このサイクルだけが、任意の輪郭で許容圧力角を超過しないことを保証します。

チップの排出

 
注意事項
工具とワークへの危険に注意!
チップが最適に排出されないと、チップの生成能力が高い場合にこれが狭いポケットに挟まる可能性があります。それにより工具が破損するおそれがあります。
  1. OCM 切削データ計算機の推奨に従った最適なチップ排出に注意してください

プロセス冷却

OCM切削データ計算機は、多くの材料で圧縮空気冷却を使った乾式チップ生成を推奨しています。圧縮空気はチップ箇所に直接当てる必要があり、できれば工具ホルダーを使用します。これが可能でない場合は、内側へのクーラント供給を使ってフライス加工することもできます。

内側へのクーラント供給を行いながら工具を使うと、場合によってはチップの排出が悪くなることがあります。工具の耐久期間が短くなる可能性があります。

操作

切削データ計算機を開く

  1. サイクル 272 OCM ROUGHING を選択します

  1. アクションバーで「OCM切削データ計算機」を選択します

切削データ計算機の終了

  1. 適用」を選択します
  2. 測定された切削データが規定のサイクルパラメータに適用されます。
  3. 現在の入力が保存され、切削データ計算機を再度開くと適用されます。

  1. あるいは

  2. キャンセルする」を選択します
  3. 現在の入力は保存されません。
  4. いずれの値もサイクルに適用されません。
 
Tip

OCM切削データ計算機は、このサイクルパラメータに関係する値を計算します。

  • プランジング深さ(Q202)
  • オーバーラップファクタ(Q370)
  • スピンドル速度(Q576)
  • 下向きまたは上向き削り(Q351)

OCM切削データ計算機で作業する場合は、後でサイクル内のパラメータを編集しないでください。

フォーム

フォームでは、さまざまなカラーとシンボルが使用されます。

  • ダークグレーの背景:入力必須
  • 入力ボックスと注意アイコンで赤の縁取り:入力されていないか、入力が正しくありません
  • グレーの背景:入力できません
 
Tip
  • ワークピース材料の入力フィールドはグレーになっています。これは選択リストからのみ変更できます。また、工具は工具表から選択できます。
  • +-*/() キーを使って、数の入力フィールド内で計算できます。

ワークピース材料

ワークピース材料の選択は以下の手順に従ってください。

  1. 材質を選択する」ボタンを選択します
  2. さまざまな鋼、アルミニウム、チタンの選択リストが開きます。
  3. ワークピース材料の選択
  4. あるいは

  5. フィルターマスクに検索用語を入力します
  6. 該当する材料または材料グループが表示されます。「削除する」ボタンで、元の選択リストに戻ります。
 
Tip

プログラミング上および操作上の注意:

  • 目的の材料が表に記載されていない場合、該当する材料グループまたは類似の加工特性の材料を選択します。
  • ワークピース材料表 ocm.xml はディレクトリ TNC:\system\_calcprocess にあります

工具

工具を工具表 tool.t から選択し、データを手動で入力することができます。

工具の選択は以下の手順に従ってください。

  1. 工具を選択する」ボタンを選択します
  2. 有効な工具表 tool.t が開きます。
  3. 工具を選択する
  4. あるいは

  5. 検索フォームに工具名または工具番号を入力します
  6. OK」で適用します。
  7. 直径歯数歯の長さtool.t から適用されます。
  8. ねじれ角を定義します

工具の選択は以下の手順に従ってください。

  1. 直径を入力します
  2. 歯数を定義します
  3. 歯の長さを入力します
  4. ねじれ角を定義します

入力ダイアログ

説明

直径

粗加工工具の直径 (mm)

粗加工工具の選択後、値が自動的に適用されます。

入力:1...40

歯数

粗加工工具の刃数

粗加工工具の選択後、値が自動的に適用されます。

入力:1...10

ねじれ角

粗加工工具のねじれ角 (°)

ねじれ角が異なる場合は、平均値を入力します。

入力:0...80

 
Tip

プログラミング上および操作上の注意:

  • 直径歯数歯の長さの値は、いつでも変更できます。変更した値は、工具表 tool.t には反映されません
  • ねじれ角は、工具メーカーの工具カタログなどの工具説明に記載されています。

境界

上下限には、最大スピンドル回転数および最大フライス加工送り速度を定義する必要があります。算出された切削データはこの値に制限されます。

入力ダイアログ

説明

最大スピンドル速度

機械および固定状況が許容する最大スピンドル回転数 (rpm)。

入力:1...99999

最大ミル速度

機械および固定状況が許容する最大フライス加工送り速度 (mm/min)。

入力:1...99999

加工パラメータ

加工パラメータにはプランジング深さ(Q202)および機械的、熱的負荷を定義する必要があります。

入力ダイアログ

説明

プランジング深さ(Q202)

プランジング深さ (工具直径の >0 mm ~ 6 倍)

OCM 切削データ計算機の開始時に、サイクルパラメータ Q202 の値が適用されます。

入力:0.001...99999.999

ツールへの機械的負荷

機械的負荷の選択用スライダー (通常値は 70 % ~ 100 %)

入力範囲:0%~150%

ツールへの熱負荷

熱負荷の選択用スライダー

工具の熱的な耐摩耗性 (コーティング) に応じたスライダー。

  • HSS:わずかな熱的な耐摩耗性
  • VHM (コーティングなし、または通常コーティングのハードメタルのミリング刃):中度の熱的な耐摩耗性
  • コーティング(強力コーティングのハードメタルのミリング刃):高い熱的な耐摩耗性
  •  
    Tip
    • スライダーは緑色の領域でのみ有効です。この境界は、最大スピンドル回転数、最大送り速度、選択した材料によって異なります。
    • スライダーが赤い範囲にある場合は、最大許容値が使用されます。

入力範囲:0%~200%

加工パラメータ

切削データ

切削データの項に計算された値が表示されます。

プランジング深さ Q202 に加えて、以下の切削データが該当するサイクルパラメータに適用されます。

切削データ:

サイクルパラメータの適用:

オーバーラップファクタ(Q370)

Q370 = TOOL PATH OVERLAP

ミル送り(Q207) (mm/min)

Q207 = FEED RATE MILLING

スピンドル速度(Q576) (rpm)

Q576 = SPINDLE SPEED

下向きまたは上向き削り(Q351)

Q351= CLIMB OR UP-CUT

 
Tip

プログラミング上および操作上の注意:

  • OCM切削データ計算機は順方向の値 Q351=+1 のみを計算します。これにより、常に Q351=+1 がサイクルパラメータに適用されます。
  • OCM切削データ計算機は、切削データとサイクルの入力範囲を調整します。入力範囲の値が下限または上限を超えている場合は、OCM切削データ計算機にこのパラメータが赤でハイライト表示されます。この場合、切削データはサイクルに適用されません。

以下の切削データは、情報および推奨事項です。

  • 側面切込み (mm)
  • 歯形送りFZ (mm)
  • 切断速度VC (m/min)
  • 材料除去率 (cm3/min)
  • スピンドルパワー (kW)
  • 推奨冷却

これらの値を使って、選択した切削条件を機械が遵守できるか判断することができます。

加工パラメータ

機械的および熱負荷の両方のスライダーは、刃にかかる力や温度の影響を受けます。値が高いと時間あたりの生産量が増えますが、負荷は高くなります。スライダーを動かすと、加工パラメータを変更できます。

時間あたりの最大生産量

時間あたりの生産量を最大にするには、機械的負荷のスライダーを 100 % にし、熱負荷のスライダーを工具の該当するコーティングに設定します。

定義した設定が可能であれば、切削データにより工具が機械的および熱的な負荷限界で使用されます。工具直径が大きい (D>=16 mm) 場合、非常に高いスピンドル出力が必要になる場合があります。

理論上で期待されるスピンドル出力は切削データに記載されています。

 
Tip

許容スピンドル出力を超える場合は、機械的負荷のスライダーおよび必要に応じてプランジング深さ (ap) を下げます。

スピンドルが定格回転数以下の場合や、非常に高い回転数で定格出力に達しないよう注意してください。

時間あたりの生産量を上げたい場合、最適なチップ排出に注意する必要があります。

小さい負荷および少ない摩耗

機械的負荷および熱的な摩耗を減らすためには、機械的負荷を 70 % にします。熱負荷は、工具コーティングの 70 % になる値に下げます。

この設定は、機械的にも熱的にもバランスのとれた具合で工具に負荷をかけます。一般的に最大で工具の耐久時間に達します。機械的負荷が低くければ、静かで振動の少ないプロセスが可能です。

最適な結果を得る

計算された切削データで満足のいかないチッププロセスになった場合、さまざまな原因が考えられます。

高すぎる機械的負荷

機械的な過負荷の場合、まずプロセス出力を下げる必要があります。

以下の現象は、機械的な過負荷を示しています。

  • 工具刃の角の破損
  • 工具軸の破損
  • 高すぎるスピンドルトルクまたは高すぎるスピンドル出力
  • スピンドル受けでの高すぎる軸力および向心力
  • 異常な振動または振動音
  • 弱すぎる固定具による揺れ
  • 長く突き出した固定具による揺れ

高すぎる熱負荷

熱的な過負荷の場合、プロセス温度を下げる必要があります。

以下の現象は、工具の熱的な過負荷を示しています。

  • チップ面のクレータ摩耗が高すぎる
  • 工具の赤熱
  • 溶けた刃 (チタンなどの非常に加工しにくい材料の場合)

時間あたりの生産量が少なすぎる

加工時間が長すぎて、それを短くする必要がある場合、両方のバーを上げることで時間あたりの生産量を増やすことができます。

機械にも工具にも余裕がある場合は、まずプロセス温度のバーを上げることを推奨します。次に、可能であればプロセス出力のバーも上げます。

トラブルシューティング

以下の表は、考えられる不具合とその対処をまとめたものです。

現象

スライダーツールへの機械的負荷

スライダーツールへの熱負荷

その他

振動 (例えば固定具がゆるすぎる、または長時間外されていた工具)

削減

場合によっては高める

固定具を点検する

異常な振動または振動音

削減

-

軸での工具破損

削減

-

チップ排出を点検する

工具刃の破損

削減

-

チップ排出を点検する

高すぎる摩耗

場合によっては高める

削減

工具の赤熱

場合によっては高める

削減

冷却を点検する

長すぎる加工時間

場合によっては高める

まず高める

高すぎるスピンドル負荷

削減

-

スピンドル受けの高すぎる軸力

削減

-

  • プランジング深さを減らす
  • ねじれ角の小さい工具を使用する

スピンドル受けの高すぎる向心力

削減

-