POLARKIN を使用する極のキネマティクスでの加工

用途

極のキネマティクスでは、加工面の経路動作は、2 本の主リニア軸ではなく、1 本のリニア軸と 1 本の回転軸によって実行されます。その際、主リニア軸と回転軸は加工面を定義し、送り軸とともに加工空間を定義します。

フライス盤では、適切な回転軸がさまざまな主リニア軸の代わりとなることができます。極のキネマティクスにより、大型機械の場合などに、主軸だけで加工するよりも広い面を加工できます。

主リニア軸が 2 本しかない旋盤や研削盤では、極のキネマティクスにより正面フライス加工が可能です。

条件

  • 少なくとも 1 本の回転軸を装備した機械
  • 極の回転軸は、選択したリニア軸に向かい合ってテーブル側に取り付けられているモジュロ軸でなければなりません。したがって、リニア軸は回転軸とテーブルの間にあってはなりません。回転軸の最大移動範囲は、ソフトウェアリミットスイッチによって制限される場合があります。

  • NC 機能 PARAX COMP DISPLAY が、少なくとも主軸 XYZ でプログラミングされている
  • ハイデンハインでは、PARAX COMP DISPLAY 機能内で利用可能な軸をすべて指定することを推奨しています。

  • FUNCTION PARAXCOMP で平行軸の位置決め時の動作を定義する

機能説明

極のキネマティクスが有効な場合、作業エリア「位置」にアイコンが表示されます。このアイコンによって PARAXCOMP DISPLAY 機能のアイコンが隠れます。

POLARKIN AXES 機能では、2 つのリニア軸と 1 つの回転軸を使用した極のキネマティクスを有効化できます。

  • 1 番目のリニア軸は、回転軸に対してラジアルでなければなりません。
  • 2 番目のリニア軸は送り軸を定義し、回転軸に対して平行でなければなりません。
  • 回転軸は極軸を定義します。これは最後に定義されます。
  • 選択したリニア軸に向かい合ってテーブル側に取り付けられていて、使用可能なモジュロ軸はすべて、回転軸として使用することができます。
  • したがって、選択された 2 本のリニア軸は、回転軸も配置されている面を固定します。

次の状況では、極のキネマティクスが無効になります。

  • POLARKIN OFF 機能の処理
  • NC プログラムの選択
  • NC プログラム最後への到達
  • NC プログラムの中断
  • キネマティクスの選択
  • コントローラの再起動

MODE オプション

位置決め動作用に以下のオプションが用意されています:

MODE オプション:

構文

機能

POS

回転の中心から見ると、コントローラはラジアル軸の正の方向に機能します。

それに合わせて、ラジアル軸を事前に位置決めしておく必要があります。

NEG

回転の中心から見ると、コントローラはラジアル軸の負の方向に機能します。

それに合わせて、ラジアル軸を事前に位置決めしておく必要があります。

KEEP

コントローラは、機能をオンにしたときに軸がある回転中心の側で、ラジアル軸を使って留まります。

オンにしたときにラジアル軸が回転中心にある場合、POS が適用されます。

ANG

コントローラは、機能をオンにしたときに軸がある回転中心の側で、ラジアル軸を使って留まります。

POLE の選択が ALLOWED の場合、極による位置決めが可能です。これにより、極のある側が切り替えられ、回転軸の 180°回転が回避されます。

POLE オプション

極は、POLARKIN 内で定義する回転軸の回転中心です。

極での加工用に以下のオプションが用意されています:

POLE オプション:

構文

機能

ALLOWED

極での加工が許可されます

SKIPPED

極での加工が阻止されます

 
Tip

ロックされる領域は、極の周りの半径 0.001 mm (1 μm) の円形領域に相当します。

入力

ユーザーマニュアルに含まれている NC プログラムは、あくまで解決のヒントです。機械で NC プログラムまたは個々の NC ブロックを使用する前には、必ずそれらを調整してください。

以下に応じて調整を行います。

  • 工具
  • 切断値
  • 送り速度
  • 安全な高さまたは安全な位置
  • 機械特有の位置 (例:M91)
  • プログラム呼出しのパス

一部の NC プログラムは機械キネマティクスに依存しています。このような NC プログラムは、最初のテストランの前にその機械キネマティクスに合わせてプログラムを調整してください。

さらに、実際のプログラムランの前にシミュレーションで NC プログラムをテストしてください。

 
Tip

プログラムをテストすることで、ソフトウェアオプションや有効な機械キネマティクス、現在の機械構成で、その NC プログラムが使用可能かどうかを確認できます。

11 POLARKIN AXES X Z C MODE: KEEP POLE: ALLOWED

:軸 XZC による極のキネマティクスを有効にする

NC 機能には以下の構文要素が含まれます。

構文要素

意味

POLARKIN

極のキネマティクス用の構文のオープナー

AXES または OFF

極のキネマティクスを有効化または無効化します

XYZUVABC

2 本のリニア軸と 1 本の回転軸の選択

AXES 選択でのみ

機械に応じて、他の選択肢が用意されています。

MODE:

位置決め動作の選択

MODE オプション

AXES 選択でのみ

POLE:

極での加工の選択

POLE オプション

AXES 選択でのみ

注意事項

  • 主軸 X、Y、Z および使用可能な平行軸 U、V、W は、ラジアル軸または送り軸として使用することができます。
  • POLARKIN 機能の前に、極のキネマティクスの一部ではないリニア軸を極の座標上に配置してください。それ以外の場合、少なくとも選択解除されたリニア軸の軸値に相当する半径を持ち、加工のできない領域が生じます。
  • この領域では送り速度の変動が生じる可能性があるため、極および極の近くでの加工は避けてください。このため、POLE オプション SKIPPED を使用することをお勧めします。
  • ワーク基準点が極にある必要はありません。
  • 極のキネマティクスと次の機能の組み合わせは除外されます。
  • 軸の移動範囲が制限される場合があることに注意してください。
  • モジュロ軸でのソフトウェアリミットスイッチに関する注意事項

  • 制限を通過

機械パラメータと関連した注意事項

  • 工具中心点経路が極の軸を通過する場合、機械メーカーはオプションの機械パラメータ kindOfPref (No. 202301) でコントローラの動作を定義します。
  • 機械メーカーはオプションの機械パラメータ presetToAlignAxis (No. 300203) で、オフセット値をどのように解釈するかを軸別に定義します。POLARKIN では、機械パラメータは工具軸を中心に回転する回転軸にのみ関連します (通常は C_OFFS)。
  • オフセットおよび 3D 基本回転の対置

    • 機械パラメータが定義されていないか、値 TRUE で定義されている場合、オフセットを使用して平面でのワークの傾き具合を補正できます。オフセットは、ワーク座標系 W-CS の向きに影響します。
    • ワーク座標系 W-CS

    • 機械パラメータが値 FALSE で定義されている場合、オフセットを使用して平面でのワークの傾き具合を補正することはできません。処理中にオフセットは考慮されません。

例:極のキネマティクスの SL サイクル

ユーザーマニュアルに含まれている NC プログラムは、あくまで解決のヒントです。機械で NC プログラムまたは個々の NC ブロックを使用する前には、必ずそれらを調整してください。

以下に応じて調整を行います。

  • 工具
  • 切断値
  • 送り速度
  • 安全な高さまたは安全な位置
  • 機械特有の位置 (例:M91)
  • プログラム呼出しのパス

一部の NC プログラムは機械キネマティクスに依存しています。このような NC プログラムは、最初のテストランの前にその機械キネマティクスに合わせてプログラムを調整してください。

さらに、実際のプログラムランの前にシミュレーションで NC プログラムをテストしてください。

 
Tip

プログラムをテストすることで、ソフトウェアオプションや有効な機械キネマティクス、現在の機械構成で、その NC プログラムが使用可能かどうかを確認できます。

0 BEGIN PGM POLARKIN_SL MM

1 BLK FORM 0.1 Z X-100 Y-100 Z-30

2 BLK FORM 0.2 X+100 Y+100 Z+0

3 TOOL CALL 2 Z S2000 F750

4 FUNCTION PARAX COMP DISPLAY X Y Z

FUNCTION PARAX COMP DISPLAY を有効にする

5 L X+0 Y+0.0011 Z+10 A+0 C+0 FMAX M3

; ロックされた極領域外でのプリポジショニング

6 POLARKIN AXES Y Z C MODE: KEEP POLE: SKIPPED

; POLARKIN を有効にする

7 * - ...

; 極のキネマティクスでのゼロ点シフト

8 TRANS DATUM AXIS X+50 Y+50 Z+0

9 CYCL DEF 14.0 CONTOUR GEOMETRY

10 CYCL DEF 14.1 CONTOUR LABEL2

11 CYCL DEF 20 CONTOUR DATA ~

Q1=-10

;MILLING DEPTH ~

Q2=+1

;TOOL PATH OVERLAP ~

Q3=+0

;ALLOWANCE FOR SIDE ~

Q4=+0

;ALLOWANCE FOR FLOOR ~

Q5=+0

;SURFACE COORDINATE ~

Q6=+2

;SET-UP CLEARANCE ~

Q7=+50

;CLEARANCE HEIGHT ~

Q8=+0

;ROUNDING RADIUS ~

Q9=+1

;ROTATIONAL DIRECTION

12 CYCL DEF 22 ROUGH-OUT ~

Q10=-5

;PLUNGING DEPTH ~

Q11=+150

;FEED RATE FOR PLNGNG ~

Q12=+500

;FEED RATE F. ROUGHNG ~

Q18=+0

;COARSE ROUGHING TOOL ~

Q19=+0

;FEED RATE FOR RECIP. ~

Q208=+99999

;RETRACTION FEED RATE ~

Q401=+100

;FEED RATE FACTOR ~

Q404=+0

;FINE ROUGH STRATEGY

13 M99

14 TRANS DATUM AXIS X+0 Y+0 Z+0

15 POLARKIN OFF

; POLARKIN を無効にする

16 FUNCTION PARAX COMP OFF X Y Z

FUNCTION PARAX COMP DISPLAY を無効にする

17 L X+0 Y+0 Z+10 A+0 C+0 FMAX

18 M30

19 LBL 2

20 L X-20 Y-20 RR

21 L X+0 Y+20

22 L X+20 Y-20

23 L X-20 Y-20

24 LBL 0

25 END PGM POLARKIN_SL MM